母の湯のみが、二つ並んでいました
仕事のあと、母の家に寄ってきました。今日は一日、霧のような細かい雨が降ったりやんだりで、空気がしっとりしていました。
玄関を開けると、台所のテーブルに湯のみが二つ並んでいます。母は「さっきまで、お客さんが来てたのよ」と言うのですが、近所の方に聞いてみたら、今日は誰も来ていないそうです。たぶん、私が来るのを待って、先に二つ用意してくれたのでしょう。そう思うことにして、ありがたくお茶をいただきました。
最近の母は、同じ話を二度、三度とします。二度目も、はじめて聞くような顔で「それは大変だったね」と返すと、母もうれしそうに続きを話します。薬の袋は、曜日ごとに分けた箱に入れ直しました。母は「便利なものがあるのね」と感心していました。
帰り際、母は玄関で、背中を丸めたまま、いつまでも手を振っていました。車の中から手を振り返しながら、来週は、パッチワークで作った小さなコースターを持っていこうと決めました。湯のみの下に敷いたら、きっと喜んでくれます。
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