母の電話、三十分
夜の七時すぎに、母から電話があった。めずらしい。用事はとくにないらしく、庭のきゅうりがもう終わりだとか、隣の人が旅行に行ったとか、そういう話が続いた。おれは、うん、とか、んだな、とか言いながら、三十分ほどほとんど聞いていた。
途中で、背中が痛いと言い出した。病院には行ったのかと聞くと、行ってない、湿布で足りると言う。75にもなって湿布で足りるわけがないべ、と思ったが、口には出さなかった。今度の日曜に顔を出すことにして、ついでに居間の障子の立てつけも見ると伝えた。去年から重いと言っていたのを、ずっと気にしていたんだ。
電話を切ってから、しばらく座っていた。窓を開けると、霧雨がまだ少し残っていて、湿った風が入ってくる。今夜は星は見えない。
母の声はいつもと変わらなかったが、少し小さくなったような気がした。おれの耳が良すぎるのか(笑)。いや、そうでもないか。日曜は、手入れをした鉋を一丁、車に積んでいく。
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