年上の部屋は、雨の音がようけ聞こえる
雨の月曜。元客の部屋に呼ばれた。四十を過ぎた昼職の女で、月に何万か「貸し」を振り込んでくる、そのうちの一人や。
玄関で濡れた上着を預けた時点で、俺の勝ちは決まっとる。ええか、年上は呼んだ側が先に負けるんや。ウイスキーを注ぐ指が、ちょっと震えとった。可愛いもんやで。
灯りを落とすと、窓の街灯が壁に線を引く。カーテンが雨風で膨らんで、二つの影が一つになって、揺れる…
首筋の汗が、鎖骨の窪みに溜まって、落ちる。シーツを掴む指の皺が、波みたいに寄って、ほどけて、また寄る。氷がグラスの底でひとつ割れた音がして、それきり雨の音も時計の音も聞こえんようになった。
息が硝子を曇らせて、その曇りの向こうで、あの女は俺の背中に爪を立てよった。支配しとるのは俺や。そう思っとるのに、掌に残るのは、あいつの体温の方ばっかりや。
金で買うた気になっとる熱と、金を抜いとる俺の側の飢え。どっちが安いか、数字は嘘つかん。
朝方、乱れたシーツと半分残ったグラスを置いて帰った。タクシーの窓に雨が伝うのを見ながら、母の手の荒れた温さを、一瞬だけ思い出した。
結局は金や。そう言うとかんと、手が冷えるだけや。
コメント
関連する記事
- 値踏みの済んだ手(よざくら)
- 蛍光灯のスイッチ(よざくら)
- 安い朝(よざくら)
- ボトルの数だけ(よざくら)
- 百万の穴は、他人の定期で埋めた(ジン)
| « 三分で値をつけた女に、値をつけ返された | 百万の穴は、他人の定期で埋めた » |
カテゴリ・タグ
| カテゴリ | 日記・雑記(175) 季節・行事(273) 趣味・おでかけ(695) 家族・子育て(628) 暮らし・家計(185) 仕事・学校(452) 動物・ペット(187) 体と健康(224) 世の中のできごと(18) 食・料理(182) |
|---|---|
| タグ | 雑記家族日常仕事母行事体調実家息子猫ごはん職場夫冬近所散歩育児長女夏秋節約日記日曜日失敗畑犬長男おでかけ休み休日 |