180万の針は、客の前では外しとく
去年の九月に買うた二本目、ステンレスの三針。180万。今日は休みやったから、昼過ぎに起きて、鶏むねとブロッコリー食うて、ジムの前に中古時計店を二軒まわった。霧雨でむしむしする。最高30℃越えやのに、店の中だけ冷房が効きすぎて、ガラスケースの前で腕だけ冷えた。
ええか、客の前では時計は外していく日と、わざと見せる日がある。これは使い分けや。
さみしがりの客には、安い方の薄い手巻きを見せる。80万。「ええ時計やなあ」て言わせて、「親父の形見みたいなもんや」て一言だけ落とす。嘘は一個や。親父の形見なんか、あるかい。写真一枚しか残っとらんわ。
でも向こうは勝手に物語を足してくれる。可愛いもんやで。
逆に、数字で動く客にはスポーツタイプを見せる。袖口からちらっとだけ。ほんで「これ、まだローン残っとるんよ」て言う。実際は一括やけどな。そしたら「大変やね」て顔になって、ボトル一本、いや二本。同情は一番高く売れる。
今日、店のおっちゃんに「三本目はダイバーズ考えとるやろ」て言い当てられた。…当たっとるのが腹立つ。そろそろ貯金300万のうち、百いくか。母に渡す分は別に取ってあるから、俺の遊び銭の範囲や。
時計は嘘つかん。毎日ちゃんと動く。女は動いたり止まったりするけど、針は止まらへん。そこだけは、ほんまに尊い。ほんで値段も落ちにくい。結局は金や。
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