席に呼ばれへんようになった月曜
月曜の夜、店に出た。くもりで、霧雨もやんで、客足はそこそこ。
先週から、指名の電話が鳴らん。数字は嘘つかん。先月と比べて、席に座った時間は三割減や。原因は分かっとる。あの書面や。示談で百万払うて終わったはずやのに、店長の北村の目が、俺を見るとき一拍遅れて笑いよる。冷たいんや。オーナーの平田もや。ああいう連中は、売上が立っとるあいだは「仁さん仁さん」と呼んで、傷がついた途端に、傷のついた皿みたいに扱う。結局は金や。
ほんで今日や。ヘルプで回された席に、俺の元の太い客がおった。ええか、あの女、先月まで俺の肩に頭のせて泣いとったんやで。それが今夜は、入って三ヶ月の年下の新人の話に、腹抱えて笑うとる。顔だけの、酒も飲めん、相槌しか打てん小僧や。そいつに、俺が三年かけて育てた財布が流れていきよる。
新人を店長が「勢いあるな」と褒めたとき、俺は笑顔のまま、グラスの氷を奥歯で噛んだ。ガリッて音がして、誰も気づかんかった。腹の底では、あの小僧の細い首を掴んで、壁に叩きつけたろかと思うた。ほんまに思うた。後ろ頭が壁に当たる鈍い音まで、頭の中で鳴った。そのあとで客の方を見たら、あの女も同罪やと思えてきた。人の三年を、ちょっと若い顔で踏み倒しよる。情が薄いんは、俺やなくてお前らや。
帰りはタクシーを拾わんと、一駅ぶん歩いた。脚が重い。胸の奥がずっと熱い。店は、落ち目の人間から先に捨てる。それは知っとった。知っとって、俺が一番うまくやってきた手口を、今度は店に、客に、やられとるだけの話や。腹立つのはそこやんけ。
来月、見とけ。数字で全部ひっくり返したる。
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