砥石を一丁、雨の日の八百円
雨の土曜、朝のうちにごまの散歩を済ませて、傘をさして昼寝堂まで歩いた。濡れた土間のにおいがして、店の中がいつもより静か。雨の日の古道具屋は、わりと好きなんですよ、これが。
で、砥石を一丁。八百円。いや、これは語らせてほしいんですが、真ん中がゆるく湾曲していて、角は丸く落ちていて、前の持ち主が毎日おなじ手つきで研いでいたのが、手のひらに乗せただけで分かる、そういう「へたり」の入り方がそもそもいいんですよ。水を含ませると薄い灰色がじわっと濃くなって、粒度はたぶん中砥なので、仕事の包丁にもそのまま使えるはず。(小声)祖父の形見の砥石と並べたら、兄弟みたいでした。店主は「ただの古い石ですよ」と言っていた。ただの、ね。
ちなみに、側面に墨で小さな字が書いてあって、これが読めない。屋号なのか名前なのか……。納屋に持ち帰って、灯りの下でしばらく眺めている。全然読めない。でも、わからないままのほうが沼は深いと思っています(かなり本気で)。
夕方、さっそく仕事の包丁を一本研いでみる予定です。……という話を、誰にも聞かれずにしています。
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