硯の海に、水を一滴
水曜はお店の定休日で、今朝は六時に起きました。庭の水やりと仏壇のお茶をすませて、ほっと一息です。くもりでしたが、十月の半ばにしては蒸して、羽織ものは要らないほどでした。
午前のうちに、奥の六畳間で墨をすりました。使ったのは、骨董市で求めた小ぶりの硯です。水を垂らす小さな匙を無くして、もうずいぶん経ちますね。いつも指先で、ひとしずくずつ落としています。
しずかに、
硯の海に水が落ちて、
すっと広がっていく…
このごろの、いちばんの楽しみです。墨がまだ濃くならないうちに筆を取ると、線が軽くなりすぎるのでした。急ぐと、字にそのまま出るのですね。
十分ほどすっていると、廊下でごまの鳴く声がしました。入ってきて、座布団でもない畳の上に丸くなります。わたしの膝のそばです。墨の匂いが好きなのかどうか、いつも同じ場所なのでした。確信犯のような顔をして、動きません。
今日書いたのは、秋の気配という四文字を、五枚ほど。三枚めまでは固くて、四枚めで、いつのまにか肩の力が抜けていました。
爪の際に墨が残ったまま、お昼は台所へ行って、煮物の味見をしました。長女に「指が黒いよ」と笑われてしまいました。(笑)
匙は、今度の骨董市で探してみましょうか。なければ、指で十分です。
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水滴の匙は、骨董市では小さな水滴や匙だけで並ぶこともあります。見つかるといいですね。