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よざくら

三階の白い靴

· カテゴリ: 日記・雑記

店を閉めて、片付けて、午前二時すぎ。いつもの散歩のはずが、足がいつのまにか、橋のむこうへ向かっていた。

常連さんがスマホを見せてきたのは、先週だった。知らない女の人が、あの男の隣で笑っている。写真の端に、見おぼえのある腕時計。わたしが選んだ革のバンド。ふわっと笑ってあげたけれど、グラスの氷を、二回かじった。

四階建てのマンションの、三階の廊下。ドアの前に、白いスニーカーが一足。わたしの足より、ひとまわり小さい。郵便受けのほうに、名前が二つ並んでいる。

ふざけんな、と口の形だけで言った。クソ。ボケ。あのクソ設計士、図面は引けても、わたしの引いた線には気づかないんだよね。

あの女のスニーカーの中で、ムカデが眠ればいい。階段で踵が折れて、前歯が欠ければいい。ドアノブを回すたびに、爪が一枚ずつ割れればいい。朝の味噌汁がしょっぱすぎて、あの男が、黙って飲み込めばいい。死ね。いや、死ななくていい。ずっと生きて、ずっと、わたしより幸せじゃなければいい。

三十六にもなって、他人の玄関に立っている。肩はこるし、膝は笑うし、(笑)。

ドアの向こうの寝息を、数えていた。インターホンに、指が届く距離だった。押さなかったのは、えらいからじゃない。押して出てきた顔がしあわせそうだったら、わたしはたぶん、本当に殺す。

夜散歩雑記

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コメント

かのこ 2026-10-26
わかる。押さなかっただけ、えらいよ。わたしは押した側だから、あとで自分の顔がいちばん嫌いになった。

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