テレビの前の、雪の舞台
ご無沙汰しています。おかげさまで、変わらずお店に出ています。予約の間を空けて、お客さんが帰るたびに椅子と鏡を拭く毎日です。東京の劇場へは、もう一年近く行っていません。
そのかわり、去年の秋ごろから、配信で歌舞伎を見ています。昨夜は仕事から帰って、節分の豆を片づけてから、居間のテレビで見ました。雨の音が強くて、少し音を上げて。演目は、娘が雪の中でひとり踊るもの。いちばん好きな一幕です。
配信のいいところは、寄りの画面があることなんですよ。三階席からは見えない「鬘」の生え際まで、ちゃんと映ります。ちなみに、女方の鬘は「羽二重」という薄い絹を額に貼って、地毛のように見せているんだそうです(その下で、役者さんの髪はぺったり押さえられています)。振り返ったときの「鬢」のふくらみが少しも崩れないまま、白い肩に雪が落ちて、袖から裾へと流れていくのを、何度も巻き戻して見てしまいました。職業病ですね。
途中から長女が隣に座って、「いま一瞬で着替えたよね」と。あれは「引き抜き」といって、粗く縫いつけた糸を後見さんが抜くと、上の衣装がはらりと落ちる仕掛けなんだそうです。説明したら、ふうん、と言って部屋へ戻っていきました(笑)。
今朝は晴れて、外は霜でした。あんこは散歩で、凍った水たまりをしばらく嗅いでいました。劇場の匂いはしないけど、テレビの前の客席も、悪くないかな、と。
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