祖母の部屋の前で待つ犬
実家の犬は五歳になる。茶色のトイプードルで毛がくるくるしており、帰宅すると玄関まで迎えに来るのは昔からなのだが、ここ数週間のあいだに習慣がひとつ増えた。一階奥の和室の前に、しばらく座っているのである。
祖母が亡くなって、もうすぐ一か月になる。あの部屋は祖母が昼間ずっと手元で何かを編んでいた場所で、犬はその足もとが定位置だった。今は襖が閉まっている。それでも夕方になると廊下に座って襖を見ていて、誰かが開けるまで動かない。開ければ中に入って、畳の匂いを嗅いで、二周して出てくる。何を確かめているのかは本人にしか分からない(犬なので説明はない)。
今日は小雨で、気温も一桁だった。仕事から帰ると犬は例によって襖の前にいて、わたしが隣に座っても、こちらを見もしない。いちおう撫でてみたものの、尻尾が一回振れただけである。要するに、わたしは慰め役として採用されていない。
母は「あの子なりに分かってるんだよ」と言うし、そうだろうとは思う。ただ、分かっているのに待つというのは、人間でもよくやる話ではある。わたしは待つ側に回る体力が足りないので、さっさと風呂に入って寝た。犬のほうが、よほど根気がある。
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