曇りの夜、台所で季語を探しました
雨が二日続いたあとの火曜日は、朝から空がうすく曇っていました。最高気温は二十度をすこし超えたくらいで、園庭に出ても、風が冷たいとは感じませんでした。ただ、土の匂いが違っていました。湿ったまま乾ききらない、秋の終わりの匂いです。
夕方、お迎えの時間に、年長の子が水たまりの跡を指さして「ここ、昨日は海だったよね」と言いました。昨日というのは、四十ミリを超える雨が降った日のことです。園庭の端が、たしかに池のようになっていました。海、という言葉の選び方に、ふと立ち止まりました。大人なら「池」か「水たまり」で済ませてしまうところです。
夜、子どもたちを寝かせてから、台所で句帳を開きました。歳時記の「秋深し」のページには、似た句がいくつも並んでいます。どれも、もう誰かが詠んでいる。私の手元に残ったのは、あの子の「海」だけでした。季語ではないのに、季語よりも手触りがある言葉です。
水たまりの跡に海あり秋深し
推敲はまだ途中で、「海あり」が少し強いかもしれません。句会の先生なら、説明しすぎと言うでしょう。それでも今夜は、子どもの言葉を借りたまま、置いておくことにしました。
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