雪の朝、肩が鳴った
朝五時に起きたら、外は白かった。昨日の雪が凍っとる。左肩が、起きる前から疼いとった。雨の前だけじゃなか。冷えれば鳴る。二十代の殴り合いの置き土産ばい。
現場は午前だけで切り上げた。凍った足場に若いのが二人、手袋も二重にせんで震えとる。ひとりは「寒くて力入らないっす」と抜かした。ボケが。寒いのは全員たい。俺は粉塵で咳き込みながら、梁を一本ずつ手ばらしした。ひとりで三本分。若いのは口を開けて見とるだけ。腹の底から情けなか。
肩の傷は、組にいた二十五のころ。駐車場で相手が三人、こっちが俺ひとり。鉄パイプで肩を砕かれた。それでも立って、三人とも地面に寝かせた。兄貴が迎えに来て、「馬鹿が」と一言。そのあと黙ってラーメンば食わせてくれた。白濁のスープが、折れた肩に染みたったい。昔の話ばい。
今の連中は、肩が痛いと言うだけで病院に走る。診断書を集めて、権利だなんだと騒ぐ。ネットで偉そうに書く奴もそうたい。顔も出さん、痛みも知らん、口だけは達者。聞こえんのか。痛みは黙って抱えるもんたい。
夜は焼酎のお湯割りを二杯。肩に熱いタオルを当てて寝る。ふん。傷は嘘をつかん。人間のほうがよっぽど嘘をつく。
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