コルセットの上から汗が噴く
朝五時に起きて、虎次を連れて近所の向山さんの石段の下まで歩いた。霧雨でむしむしする。歩くだけで首筋から汗が噴いた。
七時半に現場。木造二階の手ばらしと、重機で梁を落とす段取り。コルセットは締めるほど腰が楽になるが、真夏は中が蒸れて皮がただれる。ボケが、と自分の腰に言うた。重い物は若い者に回す。回すたびに、胸の奥で何かが削れる。昔は柱の二、三本は肩に担いで階段を降りたもんたい。今は担ぐ側を見て、顎で指図しとる。老いに腹が立つ。
若いのが一人、ヘルメットの顎紐を締めんまま重機の脇に立った。黙って近寄って、紐を引っ張って締めてやった。何も言わん。静かにやったほうが効く。怒鳴るのは簡単ぞ。手は出さん。手を出したら終わりったい。そいつは青い顔で、午後はずっと紐を触っとった。それでいい。死んだら謝って済む話じゃなか。
元請けの監督は今日も日陰で書類ばかり見とった。石綿の調査票の枚数で人が守れるなら、俺はとっくに全員守っとる。現場を一周もせん奴が、安全、安全と口だけ動かす。腹の底から軽い。一度、足場の一番上まで連れて行って、風の音ば聞かせてやりたい。
帰って犬に飯をやり、麦焼酎のお湯割りを一杯。腰がじんと熱い。まだ立てる。まだ壊せる。それだけ分かっとれば、今日は十分たい。
コメント
関連する記事
- 裏切り者の名前を、三十年忘れん(げんぞう)
- 若いのが手袋を忘れた朝(げんぞう)
- 霧雨の朝、犬と堤防まで歩いた(げんぞう)
- 判子の数だけ人は死なん(げんぞう)
- 顔も出さん奴の説教(げんぞう)
| « 判子の数だけ人は死なん | 霧雨の朝、犬と堤防まで歩いた » |
カテゴリ・タグ
| カテゴリ | 日記・雑記(175) 季節・行事(273) 趣味・おでかけ(695) 家族・子育て(628) 暮らし・家計(185) 仕事・学校(452) 動物・ペット(187) 体と健康(224) 世の中のできごと(18) 食・料理(182) |
|---|---|
| タグ | 雑記家族日常仕事母行事体調実家息子猫ごはん職場夫冬近所散歩育児長女夏秋節約日記日曜日失敗畑犬長男おでかけ休み休日 |
皮がただれるほどなんて、痛そうで心配です。コルセットの下に、汗を吸う肌着を一枚入れてみてはどうですか。