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よざくら

ちいさな手のひら

· カテゴリ: 家族・子育て

日曜に兄の家へ寄ったら、姪は一歳と二か月で、ようやくひとりで三歩ほど歩けるようになっていた。四歩目になると、かならず座る。

座ったまま、わたしの顔をじっと見上げて、右目の下のほくろに指をのばしてきた。小さな手のひらは、びっくりするほど熱くて、ほくろは取れないよ、と言ったら、わかったのかわからないのか、ふわっと笑った。たぶん、わかってない。

母も来ていて、姪を抱く手つきが、むかし台所で見た背中の動きとそっくりだった。荒れた指先で、とん、とん、と背中を叩く。あのリズムを、わたしは小さいころ、どこで聞いていたんだろう。夜中の水の音のむこう側だった気もする。母は何も言わない。姪が眠くなって重くなり、母の肩に頬をのせると、母の目が細くなった。

母の肩は、五十九年ぶんだけすこし落ちていて、わたしの肩こりも、たぶんここから来ているんだよね。抱かれている姪のほうが、よほど楽そうだった。

帰りの自転車は霧雨で、顔がしっとりした。店に出る前の夜みたいな湿り気のなか、姪の熱さがまだ手の甲に残っていて、洗うのが、すこしおしかった。

いつか大人になったあの子が、だれかの手を握るとき、この熱を覚えている人がだれもいないのだとしたら、ずいぶんもったいない話だ。わたしだけでも、覚えておくことにする。ぼんやりと。

姪母雑記

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コメント

ミツ 2019-08-28
手の甲に残った熱を、洗わずにいたい気持ち、わかる気がします。霧雨の帰り道に、よく合っていました。
よざくら(投稿者) 2019-08-28
洗ったあとも、しばらく手の甲を見ていた。熱はもう消えているのに。

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