雛人形をしまうのは早いほうがいい
2月28日。木曜日だが、大学は春休みで、今日は授業もバイトもない。昼前に起きたら、母に呼ばれた。雛人形をしまうから手伝え、という。
「早くしまわないと嫁に行き遅れる」という話は、母が毎年言う。迷信だと思っているが、箱詰めの係が妹ではなく自分なのは納得がいかない。妹は16歳で、当事者のはずだ。本人は部屋から「あとでやる」と返事をしただけだった。あとでやる人間は、たいてい来ない。
お内裏様の顔に、薄い紙を一枚ずつ当てて包む。小さな扇や笏は、どれも爪楊枝くらいの細さで、折らないように持つだけで肩が凝る。三人官女の並び順は、母の記憶頼みだった。去年と逆だった気もするが、黙っておいた。
十五分で終わった。出すときは一時間かかったので、片づけのほうが圧倒的に効率がいい。人形が消えた和室は、急に広くなって、ちょっと寒い。
母は「来年も出すからね」と言っていた。出す係もたぶん自分だ。
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