夫の麦茶、私の麦茶
今日は一日くもりで、風もあまりなく、過ごしやすい金曜日でした。
朝、夫が台所で麦茶を作っています。うちでは、夫が麦茶の係です。やかんでわかして、冷めたら麦茶ポットに移して、冷蔵庫へ。いつから係になったのか、はっきり覚えていません。定年のあと、朝の散歩から帰ると、自然に台所に立つようになりました。
夫は無口なので、麦茶の濃さについても何も言いません。ただ、私が飲んだあとに、ポットの中身を、ほんの少し確かめるように眺めています。今朝は、ふだんより色が濃い気がして、「今日のは、しっかりですね」と言ってみました。夫は「パックを一つ、多く入れてみた」と、それだけ。そのひとことが、なんだかおかしくて、二人で少し笑いました。
午後は、図書館で読み聞かせの本を選んでから、帰りに近所を歩きました。家に戻ると、夫は居間で囲碁の本を広げていて、足もとにはミケが丸くなっています。私が冷蔵庫から麦茶を出して二つのコップに注ぐと、夫は本から目を上げて、「うん、濃いね」。自分で入れたのに、人ごとのような顔です。
結婚して四十年以上、にぎやかな会話があった日ばかりではありません。それでも、同じ麦茶を飲んで、同じ部屋で別々のことをしている時間が、いまはいちばん落ち着きます。明日の朝は、パックをいくつ入れるのでしょう。ちょっと楽しみにしています。
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