眼鏡に雨粒が三つ残った
週に一回は海沿いを歩くことにしていて、いちおう、運動不足と肩こり対策のつもりである。昨日は朝から晩まで降りどおしで日も差さなかったので見送り、今日も朝から雨だったので、半分あきらめていたのですけどね。昼すぎに雲が切れて部屋が急に明るくなり、これなら歩ける、と頭に浮かんだ時点で、要するに言い訳がなくなったわけです。
外に出ると、海のほうから吹いてくる風が思ったより強くて、長めの前髪が全部うしろに持っていかれる(人に見せる額ではない)。防波堤の手前まで来たところで、日が出ているのに細かい雨がぱらぱら落ちてきて、眼鏡のレンズに三粒、きれいに残った。指で拭くとにじむのでそのまま歩いたのだけど、にじんだレンズ越しの海はピントの合っていない写真みたいで、それはそれで悪くない。いや、悪い。足元の水たまりが、まったく見えていないのである。
目がだめなぶん耳のほうはよく働くもので、波が岸に当たって引いていく音や、どこかの家の換気扇、遠くのカモメの声が、風の向きが変わるたびにいっせいに入れ替わる。三十分くらいはほとんど音だけを聞いて歩いていたので、散歩というより、ほぼラジオを聞いていたようなものです。
往復で四十分歩いて、帰って眼鏡を洗い、ソファに座ったところで記憶が切れて、気づいたら一時間たっていました。四十分歩いて一時間寝るのは、収支で言えばたぶん赤字である。まあ、肩は少し軽くなったのでよしとしますが、夕方からはまた降りだして、ベランダの手すりを叩く音がよく聞こえている。来週は晴れてほしいというのは、誰も困らない願いではある。
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