返本の山と、わたしの肩
書店のアルバイトで、いちばん体力を使う仕事は何か。レジでも品出しでもなく、返本である。売れ残った本を段ボールに詰めて、出版社に送り返す作業だ。今日は雑誌の返品が重なって、箱が八つできた。一冊一冊は軽いのに、束になった瞬間に別の生き物になる。持ち上げる前に、いちおう深呼吸をする。体力27の人間の、せめてもの儀式です。
本というのは、棚に並んだ時点で「売れるかもしれない」という期待を背負っている。返本は、その期待に事務的な判子を押す仕事でもある。要するに、わたしは毎週、誰かの渾身の一冊に「お帰りください」と言っているわけで、文学部の学生がやる仕事としては、なかなか皮肉が効いている。(誰も得をしない)
昼すぎから霧雨で、店に入ってくるお客さんの傘が、床に点々と水を落とす。濡れた床と段ボールは相性が悪い。案の定、箱の角がふにゃっとなって、先輩に「それ、角からいくよ」と言われた。ガムテープを二重に貼ったら、今度は貼りすぎだと笑われた。加減というものが、わたしにはない。
帰りの電車で、右肩がずっと重かった。眼鏡の奥も、しょぼしょぼする。それでも棚の前を通るたびに、並べ直した背表紙の列を見て少し満足してしまうので、まあ、向いてはいるのだろう。向いているのと、体がついてくるのは、別の話ではある。今夜は早く寝ます。ゲームは、明日の自分に任せる。
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