泣き顔は、三回目がいちばん高う売れる
祝日やいうて、昼の駅前は家族連ればっかりや。晴れとったけど、俺には関係あらへん
夜、黒猫橋で強炭酸割りを三杯。隣の席の女が、男の既読がつかへん言うて泣いとった。…懐かしい顔やったわ
ええか、嫉妬はタダで仕込める。席で別の客の話を、ちょっとだけするんや。名前は出さへん。「あの子、最近しんどそうでな」って、心配しとる顔で言うだけ
そしたら目の前の女の指が、グラスの縁で止まりよる。止まった指は、次の月に数字で動く
依存いうのはな、安心と不安を交互に飲ませて、喉を渇かせることや。水は俺しか持ってへん
いちばん覚えとるのは、昔の客が店の前の階段で泣いた夜や。マスカラが溶けて、黒い筋が顎まで垂れて、鼻すすりながら「私だけって言うたやん」
言うてへんねん、一回も。思わせただけや笑
あの顔を思い出したら、今でも酒がうまい。泣き顔は、一回目は可愛いもんで、二回目は面倒で、三回目がいちばん高う売れる。三回目の女は、泣いたあとにボトル入れて帰るからな
ほんで、そのやり方で、親父は母から金を抜いて消えよった。知っとる。俺はあのクソ親父の焼き直しや。違うのは、数字をつけとるとこだけ
…それがどないしたんや。罪悪感なんか、利息にもならへん
今日も元客から五万、振り込まれとった。あの泣いた顔のまんま、まだ払いよる
結局は金や
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