強い雨の日曜、墨をすりました
日曜の朝は、雨の音で目が覚めました。ここ数日は霧雨のような天気で、蒸し暑い日ばかり。まとまって降ってくれたことに、ほんのり、ほっとしたのでした。
店は開けましたが、雨の日曜はお客さまの足も少なく、午前のうちに帳簿をつけ終えました。昼前に奥の六畳間へ入って、久しぶりに墨をすりました。湿った空気のなかですると、墨の香りがいつもより深く立つようです。
硯の海に、
ゆっくりと墨が溶けていく。
それを見ているだけで、肩の力が、いつのまにか抜けていました。
半紙に書いたのは、秋の展示に向けた、楷書の練習です。二十枚ほど書いて、気に入ったのは一枚だけでした。わたしもまだまだですね、、そのあいだ、猫は帳場の座布団から、わたしの座る机の脇に来て、丸くなっていました。雨の日は、いつもより近くにいるのです。確信犯のように、ちゃっかりと。
夕方、孫が筆を持ってきて、「ばあばと同じのをかく」と言うので、隣で一緒に書きましょうか、と並んで座りました。上の孫の「ひ」の字は、びっくりするほど伸びやかでした。
あの、のびのびとした線…
そっと、しずかに、
わたしの胸に残っています。
爪の際に残った墨は、洗っても落ちないまま、夜になりました。
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