元日の朝、軽自動車が雪の中にいた
元日の朝、駐車場に出たら、白い軽自動車が白い山になっていた。一昨日の大雪のあとも昨日までずっと降り続いていたので、たぶん屋根には三十センチ近く積もっている。実家に戻ってこの車で通勤するようになって九か月、雪の朝は、まず車の輪郭を探すところから一日が始まる。
スコップで周りを掘り、ブラシで屋根の雪を落としていく。中古で買った車だからワイパーのゴムは少し硬くて、凍りついていたので熱湯ではなくぬるま湯をそっとかけた(熱いお湯は窓ガラスに悪いと、父に教わった)。ドアを開けると座席がしゃっこく、エンジンをかけても暖房がなかなか効いてこない。ハンドルの冷たさが手の甲の荒れた所にしみて、手袋を忘れたことを少しだけ後悔した。
今日は休みでどこへも行かないのだけど、車の下に溜まった雪と、タイヤまわりの氷だけは見ておきたかった。固まった氷を残したままだと、出だしで空回りするんだよね。ガソリンは一リットル百六十円ほどで、毎日の通勤だと、けっこう財布に効いてくる。ローンもあるし、奨学金の返済も半年後から始まる。なるほどね、車は買ったあとのほうが、お金の話が長い。
作業を終えて家に入ると、ムギが玄関で待っていた。十三歳になって、雪の日の散歩は足取りがゆっくりになったけれど、めんこい顔でわたしの長靴のにおいを念入りに確かめている。車の雪おろしより、この確認のほうがよほど時間がかかる。まあ、急ぐ理由もないんだけど。
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