犯人の動機に、また頷いてしまった
朝から雪で、最高気温は二度ほどでした。喫茶まつかぜへあんトーストを食べに行くつもりでしたが、母に「滑るから」と止められ、今日は家で、昨夜録画した二時間サスペンスを見ておりました。
長年勤めた経理の女性が、上司の使い込みを押しつけられ、最後にその上司を断崖へ呼び出す話でございます。一番最初の五分で、わたくしはもう犯人の味方でした。刑事が崖の上で説得する場面では、母が「おかわいそうに」と涙ぐんでおりましたが、わたくしは、湯呑みを持ったまま、画面から目が離せませんでした。共感しすぎて、お茶が冷めてしまいました。
動機の積み上げ方が、お上手でございます。帳簿の小さなずれを、皆の前で名指しされる。たった一度の場面なのに、あれは効きます。昨年十二月、あの課長も、わたくしの入力の差異三百二十円を、課の六人の前で、唾を飛ばしながら叱りました。原因は、あの先輩が先に直した伝票でございます。ご本人は、そのとき窓の外を見ておられました。
三百二十円で、あの顔をあれだけ赤くできるのなら、もっと大きな数字には、どんな顔をなさるのかしら。崖の上に立つ日が来たら、わたくし、手帳の該当ページを、ゆっくりと朗読して差し上げます。ふふ。
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