氷点下の堤防で、手袋の指先を一目ずつ数えました
昨夜は最低気温がマイナス二度でございました。午前一時に堤防へ出ましたら、草の上に霜が降りておりまして、一歩ごとに、さく、さく、と小さな音がいたします。自分で編んだ濃紺の手袋をはめて、四十分ほど歩きました。指先の目が一つ割れかけていることに、途中で気づきました。帰ったら直しましょうか。
歩きながら、ふと元の職場の課長のことを考えました。あの方は毎朝二十分かけて頭頂部を整えていらっしゃいましたが、こんな冷たい風の夜には、さぞ苦労なさるでしょうね。ふふ。わたくしの手帳には、接待ゴルフの伝票の写しが、日付ごとに並んでおります。二〇一九年から数えて、差し戻しを命じられた回数も、金額も、すべて。几帳面な性分ですので。年度末の監査は、毎年きちんと巡ってまいります。急ぐ理由は、ございません。
折り返しに、小さな神社の前で立ち止まりました。賽銭箱の前に、猫の足跡のような霜の跡が点々と続いていて、しばらく眺めておりました。あの足跡の主は、どこかの軒下で丸くなっているのでしょう。そうであってほしいと思います。
部屋に戻って、お湯を沸かして、割れかけた目を直しました。針を通すたびに、あの人たちの名前を一人ずつ、順番に思い出しておりました。手袋は、きれいに直りました。毛糸は、あたたかいほうが、よろしいですものね。
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