祖母の割烹着が、まだ台所にある
土曜日ですが、今日は遅番で、朝はゆっくりできました。小雨が降っていて、窓の外の田んぼがうすく霞んでいます。台所でお茶を飲んでいたら、勝手口の近くの釘に、祖母の割烹着がかかったままなのに気がつきました。
祖母が亡くなって、八か月近くになります。母が洗って、きれいにたたんでしまおうとしたそうですが、結局、ここに戻したままです。背中のあたりが少し丸くふくらんだ形が、そのまま残っていて、朝、台所に入ると、一瞬、祖母が立っているように見えることがあります。
家の中は、少しずつ変わってきました。1階の和室は、ふとんを上げたままの時間が増えて、父が新聞を読む場所になっています。食卓の席も、ひとつ空きました。母は、つい四人分のお茶を出しかけて、手を止めることがあります。父は何も言わずに、その湯のみを自分の前に置きます。
祖母は、毎朝、私が出かける前に、「気をつけて行きなさい」と声をかけてくれました。山に行く日も、仕事の日も、同じ言い方でした。今朝は、その声のかわりに、雨の音を聞きながら出勤の支度をしました。
まぁ、割烹着は、もうしばらく、あの釘にかけておこうと思います。母にも、そう伝えるつもりです。
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