黒を持って、二子の差
公民館の囲碁教室は、火曜の夜にある。仕事を終えて、急いで夕飯をすませ、碁盤の前に座るのが、ここ数か月の流れになった。
今日の相手は、教室で一番の古株の、八十近いご隠居さん。こちらが黒で、二子置かせてもらった。置き石があるのだから、普通に打てば負けない、というのが私の理屈だった。ところが、中盤で右辺の白の模様に踏み込んだ途端、石の形が崩れて、あっという間に二つの石を取られた。手順は悪くなかったはずだ。ただ、悪くないはずの手順が、相手の一手で全部、前提ごと変わる。生産ラインの改善では、あまり経験のない負けかただ。
終わってから、ご隠居さんは、盤を指でなぞって、「ここは、逃げないで、一本つなぐ」と言った。言われてみれば、その通りだ。理屈は、あとからなら、いくらでも立つ。
帰り道、霧雨が残っていて、公民館から北前商店街の方へ抜けると、街灯がにじんで見えた。傘をさすほどでもないので、そのまま歩いた。次の火曜までに、つなぐ手を、詰碁の本で十問ほど見ておく。
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