南天の枝を、一本だけ落とす
朝、庭の南天を切った。実が赤くなりかけとるが、枝が混みすぎて、縁側に影を落とす。くもりで風も弱く、剪定にはちょうどいい日だ。
道具は、まず剪定ばさみ。刃を砥石に軽く当てて、油を一滴。これをやらんと、切り口がつぶれる。つぶれた切り口は、あとで傷む。昔はな、親方に何度も言われたもんだ。手を動かしてみりゃ分かる、と。
切るのは、内向きに伸びた枝と、込み合ったところだけ。全部は切らん。一本落としては、縁側に座って眺める。また一本。ここを急ぐと、いかん。切ったあとは、枝の細かいところまでよく見える。葉の裏の虫も、切り口の白さも。ふふ、見えすぎて、かえって迷うもんだ。
落とした枝は、束ねて物置の脇へ。サバが縁側の端で、じっと見とった。おはぎは障子の陰から顔だけ出して、結局出てこなかった。妻は、この南天の実を、正月の飾りに使っとった。今年も、ぼちぼち実を残しておこうと思う。
切った枝は、一本。たった一本で、縁側が明るくなった。
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