三日、家から出とらん
霧雨が、三日続いとる。傘をさすほどでもないが、外へ出るとじっとり濡れる。それで、おとといから家を出ておらんかった。朝の散歩も、やめた。
暇なので、のみを三本研いだ。砥石に水を打つ。裏を押さえる。刃先を寝かせすぎんように、同じ角度で十回ずつ。最後に、棚の道具へ椿油を薄く引く。湿気の多い時期は、これをやらんと、すぐ錆が出るもんだ。手を動かしとると、半日はあっという間だに。
サバは縁側で、腹を出して伸びとる。扇風機の風が当たる場所を、ちゃんと知っとるずら。わしが砥石に向かうと、そばへ来て、水の音をじっと聞いとった。妻は生きとったころ、よく言っとった。「あんた、たまには外に出たら」と。あの声が、台所の方から聞こえそうで、ときどき手が止まる。
夕方に、ぼちぼちスーパーへ行った。三日ぶりに人と話したのは、レジで「袋はいりません」と言ったときだけ。それだけだに(笑)。
明日は、晴れるといいが。晴れたら、川の方まで歩いてみる。膝と相談して、だが。
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