墨付けは、若手に任せてみた
去年から、小さな現場をひとりで任されることが増えた。今週は、築年数の経った家の洗面所まわりのリフォーム。若手の大工2人をつけてもらって、段取りを組むところから私の仕事になる。
今日の午前中、床の下地の墨付けを、若手のひとりに任せてみた。本当は、自分でやったほうが早い。線を引くだけなら10分で済む。でも、口を出さずに黙って見ているのが、リーダーの仕事らしい。鉛筆の持ち方、定規の当て方、芯の削り具合。気になることは山ほどあるが、ぐっとこらえた。
出来上がった線は、1か所だけ2ミリずれていた。「ここ、もう一回当ててみな」とだけ言うと、本人が自分で気づいて引き直した。答えを先に言わないほうが、体に入る。私も昔、親方にそうやって何度もやり直しをさせられたのを思い出した。あのときは腹の中で悪態をついていたが、今になってありがたさがわかる。
午後は朝からの霧雨が上がって、少し日が差した。木口に残った水気を拭きながら、段取りを頭の中で組み直す。人に教えながら進めると、思った以上に時間がかかる。それでも、帰りの軽トラの中は、不思議と気分がよかった。
夜、長女の宿題を見ながら、同じことを考えていた。教えすぎない、待つ。家でも現場でも、いちばん難しい。
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