父の納屋の、杉の匂い
今日は霧雨で、朝から湿った空気でした。現場の仕事を終えて小屋で鉋の刃を研いでいたら、杉を削る匂いがして、父が建てた納屋のことを思い出しました。
父は兼業農家で、土木の会社に勤めながら米をつくっていました。納屋は、私が中学生のころに、父が休みの日だけで半年ほどかけて建てたものです。専門の大工ではないので、柱の寸法は少しずつ狂っていました。それでも父は水糸を張り、何度も測り直していました。私は材木を押さえたり、釘を渡したりするだけでしたが、角材に鋸が入って、ただの木が柱の形になっていくのが面白くて、一日中そばを離れませんでした。いま思えば、大工になった最初のきっかけは、あの納屋です。
父は無口で、仕事のやり方を口で教えることはありませんでした。ただ、田んぼの畦をならすときも、納屋の墨を打つときも、同じように黙って、ていねいにやる人でした。仕事の手を抜かない、という点では、父が一番の親方だったと思います。
今年の二月に父が亡くなってから、母のいる実家へ行く回数が増えました。先日は納屋の柱を叩いてみましたが、三十年以上たっても、まだ乾いた良い音がします。次の休みに、傾いた戸の建て付けを直しておこうと考えています。
コメント
きづち
ありがとうございます。柱を叩くたびに、父が黙って測っていた背中を思い出します。
ありがとうございます。柱を叩くたびに、父が黙って測っていた背中を思い出します。
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三十年以上たっても乾いた良い音がするのですね。お父さまが何度も測り直された納屋だからでしょうか。