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市民ブログ » カップ酒と車券と督促状

だめお

死ぬ金もないので今夜も起きてる

· カテゴリ: 日記・雑記

火曜の夜。昼過ぎまで寝て、パチンコで一万二千円すって、帰りに角の酒屋でカップ酒を二本買った。店先で立ったまま一本あけた。しばれる。手が震えてフタが開かなくて、店のじいさんに無言で開けてもらった。礼も言わなかったわ。向こうも何も言わねえ。そういう関係だべ。

部屋に帰ったら灯油が切れてた。タンクを振るとカラカラ鳴る。一缶二千六百円もするのに、財布には七百円しかねえ。ストーブの前で毛布をかぶって、二本目をあけた。死にたいかって聞かれたら、別に死にたくはない。痛いのは嫌だし、あれはあれで金がかかるっしょ。でも明日も生きてるのかと思うと、なまら面倒くさい。この二つが同じ腹の中に並んで座ってる。どっちも譲らねえ。いずいわ、ほんと。

窓の内側がもう白くなってきてる。大家からは今月も家賃の催促のメールが来てた。「お変わりありませんか」だってよ。変わりありますよ、悪い方に毎日。二万八千円が払えない部屋に、ストーブも点けずにいる。それを「お変わりありませんか」で済ませるあのジジイ、築四十五年の木造と一緒に雪の重みで潰れちまえばいい。梁が折れる音で目が覚めて、這い出そうとして、口の中に断熱材のカスが入って、自分の家賃で自分が埋まる。ざまあみろだわ。

ここから先は酒が回ってからの話。スマホが震えた。消費者金融の担当だった。出なかった。出ないで、頭の中で出た。あの猫なで声の男を、部屋に呼ぶ。ドアを閉めた瞬間に、後ろ髪を掴んで、玄関の角に顔を叩きつける。一回目で鼻が潰れる音がする。湿った、割り箸を折ったような音。二回目で前歯が飛んで、床で乾いた音を立てて転がる。俺の欠けた歯より、よっぽど安い音だ。膝の裏を蹴って落として、這いつくばった背中に体重をかける。「お支払いのご予定は」って聞くから、指を一本ずつ折ってやる。折れるたびに悲鳴の高さが上がって、三本目あたりで股のあたりが暗く濡れて、アンモニアの匂いが立つ。吐いたものが酒臭いのは、仕事のあとに一杯やってきたんだろう。お互いさまだな。命乞いは、まだ大して聞いてない。もっとやれ、と思う。思いながら、カップ酒を舐めてる。最低だと自分でもわかってる。わかっててやめない。それがこの夜のいちばん楽しい部分だ。

それから通販会社の個人情報の漏えいとかをスマホで見た。数百万件。俺の名前も入ってるかも知れない。入ってりゃいい。住所も電話も借金の額も、全部ばらまいてくれ。どうせこれ以上、失うもんなんかねえ。知らねえよ、俺の信用なんざ。

三本目の缶チューハイをあけたところで、一番最初に頭に浮かんだのは、死んだ親父の顔だった。赤ら顔で、ベルトを握って、目が据わってる。俺が今、毛布の中で酒臭い息を吐きながら、人を殴る想像で勃ちかけてるのを、あの野郎が見たら何て言う。「血は争えねえな」って笑うだろう。笑って、また母を殴るだろう。そのくせ肝臓を腐らせて、病院のベッドで黄色くなって、小さくなって死んだ。あの死に方を、俺は今、毎晩なぞってる。同じ道を、同じ速度で、わざわざ選んで歩いてる。クソ親父。クソ俺。どっちも死んで当然のカスなのに、片方だけが先に死んで、残った方がまだ息をしてる。それが腹立たしくて、また飲む。

午前一時を過ぎた。寝たら朝が来る。朝が来ると手が震える。震える手で母に電話して、今度は何て嘘をつくか考えなきゃいけない。「病院代」はもう使った。「保証金」も使った。次は何だ。あの小さい背中の婆さんが、騙されてるのを知ってて振り込むのを、俺は毎回ちゃんと待ってる。待ってる間、胸の奥がほんの少しだけ気持ちいいのが、自分でもいちばん気持ち悪い。母の優しさを、俺は財布の中身として数えてる。それが俺の本性だべ。

だから寝ない。寝ないで飲む。飲むから朝がつらい。完璧な輪っかだわ、これ。空き瓶を窓辺に並べた。明日の分もそこに並べる予定だし、母の金が入ったら、また増えるさw

酒借金夜の話

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