母の声が小さかった
雨の金曜。昼前に起きて、缶チューハイを一本あけてから母に電話した。ひと月ぶりだわ。
母の声が、やけに小さい。父の四十九日も、もう去年の話なのに、まだ家にいるみたいな声を出す。「元気かい」って聞くから、「まあまあだべ」と返した。仕事は減ってるし、派遣の倉庫は週に二日か三日しか入れない。家賃も来月は危ない。そこまでは言わない。言うのは「歯医者に行かなきゃならなくて」だけ。歯は痛くないし、行く気もない。
母は少し黙って、「いくらいるの」と言った。二万、と言ったら、三万振り込んでおくって。なまら話が早い。嘘だと知ってて出す人だわ。こっちは受話器の前で、ちょっとだけ口の端が上がった。人間のくずだべ、俺w
電話を切る前に、母が「お父さんの仏壇、線香切れちゃってね」と言った。線香くらい自分で買えよ。いや、買う金を俺が引っ張ってんのか。まあ、いいや。あの男の仏壇に上げる線香なんか、安ければ安いほどいい。生きてる間にさんざん殴って、肝臓ぼろぼろにして死んで、それでも母は毎朝手を合わせてる。ふざけんな、クソ親父。死んでもまだ母の金を食ってるっしょ。
夕方、三万が入った。その足でパチンコ屋に寄った。仏壇の線香代はたしか五百円くらいのはずだけど、そっちは回らなかった。したっけ、また明日。
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自分で気づいてるのに、そのままパチンコ屋に寄るんですね。お母さんのことだけは、ちゃんとして。