同じ話を三回聞いた夜
夕飯のあと、祖母が「今日はデイサービスでね」と話しはじめた。折り紙をしたらしくて、その話を今夜だけで三回聞いた。
三回目も、わたしは一回目と同じ顔で聞くことにしている。母に教わったわけじゃなくて、母のやり方を横で見ているうちに、たぶんこれが一番まちがいが少ないと思うようになったから。「それ、さっきも聞いたよ」と言うと祖母は一瞬だけ黙るのだけど、その黙り方がわたしは苦手だ。本人は何も悪くないのに、悪いことをした顔になってしまう。
父は口数が少ないぶん、祖母の話を最後まで黙って聞いている。弟は二回目あたりで席を立つけれど、立つ前に祖母の湯のみへお茶を足していく(なるほどね、と思った。弟なりの付き合い方なんだと思う)。みんなやり方がちがっていて、それでいいのかな、と最近は考えている。
診断が出たのは二月で、あれから半年たった。霧雨の日が続いていて、今日も窓の外は白っぽいまま暮れていった。祖母が食卓のはしに置いていった折り紙の鶴は、羽の片方が少しつぶれていて、それがなんだかめんこい。
受験の勉強はこのあとやる。眠いけど、鶴は明日の朝もたぶんそこにある。
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