父の手袋、母の湯たんぽ
朝五時に起きて、実家の台所へ降りた。昨日の大雪のあとで、外はまだ暗い。今日は小雪がちらついている。熱い番茶をいれて、しばらく立ったまま飲んでいた。
父は、デイサービスの迎えを待つあいだ、玄関で手袋をはめていた。左手がこわばっているので、右手で引っぱって、時間をかけてはめる。手伝おうかと思ったが、やめた。黙って見ていた。はめ終わると、父は小さく息をついた。まあ、これでいいのだ、という顔だった。
母は、昨夜も湯たんぽを三つ作っていた。父の布団と、自分の布団と、わたしの布団。「いらねって言ったのに」と言うと、「んだって、足、つめたぐなっぺ」と返ってきた。そのあと、じぶんの分の湯たんぽを、父の足もとに入れ直していた。わたしは何も言えなかった。
午後、母と二人で、八幡さままで雪をはいた。ムギの散歩の折り返しだった場所である。もう犬はいないのに、足がそちらへ向いてしまう。母も何も言わなかった。社の前の雪を少しだけよけて、手を合わせた。
ふたりとも、年々ゆっくりになる。それを、わたしが見れる朝が、あと何回あるのかな、と思う。
ストーブの湯気ふたりの手袋ならべおく
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