差し戻し三回、ゴルフ三万八千四百円
霧雨なのに三十二度もあって、マスクの中が蒸し風呂でございました。帰宅してすぐ、棒針を持ちました。マフラーは、ようやく百二十段。冬には間に合いそうです。毛糸のやわらかさだけが、今日のわたくしの味方でした。
昼休みは喫茶まつかぜで、あんトーストを半分だけ。残りは、胃が受けつけませんでした。午前中に、あの課長が、わたくしの経費精算を三度差し戻したからです。理由は、交通費四百二十円の端数の書き方。唾を飛ばしながら、ミントのタブレットをかじりながら。ところが、八月十五日のゴルフ三万八千四百円は、「会議費」に直しておくようにと、涼しい顔で伝票を置いていかれました。二〇一九年から数えて、この手の付け替えは、わたくしの手元で十一件目。写しは全部、手帳にございます。
ふふ。年度末の監査の席を想像いたします。整髪料が汗で溶けて、あの薄い頭頂部から額へ、白く筋になって流れる。早口が、途中で喉に詰まる。わたくしは何も言わず、写しを一枚ずつ、机に並べるだけ。膝の力が抜けて、椅子ごとずるりと下がっていく音まで、聞こえるようでございます。床に広がる生温かいもの。あの方の、クソみたいな二十年ぶんの見栄が、足元で冷えていくところを、ゆっくりと眺めたい。
それなのに今日もわたくしは「かしこまりました」と言って、判を押しました。黙って押した指が、いちばん汚いのでしょうね。後で後悔させて差し上げるのは、あの方だけではございません。
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