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知らん番号の着信に、手が冷えた
昼休み、休憩室でスマホが鳴った。知らん番号。出えへんかった。
それだけで手が冷えた。今年で四十九になるのに、体は二十一のまま、あの電話を待っとる。
親父の連帯保証人になっとった叔父は、倒産のあと、親父の穴を黙って埋めた。そこまでは、頭を下げてええ。せやけど親父が死んで、線香の匂いがまだ座敷に残っとる葬式の翌週に、あいつは電話をかけてきた。「あの金は、どないなっとるんや」。月五千円、三年。毎月、受話器の向こうで嫁の咳払いが聞こえた。親父を恨むんは俺の仕事や。お前の仕事ちゃう。
今日みたいな日は、頭の中で叔父の家の玄関を開けてしまう。茶の間でぬくぬく座っとる叔父の首根っこを掴んで、ちゃぶ台の角に顔面を二回、三回。前歯が畳に飛んで、鼻がつぶれる湿った音がして、ほんで、あの口から「堪忍してくれ」と小便混じりの声が出る。その口に、五千円札を一枚ずつ詰める。三年分、百八十枚。喉が詰まって白目をむくまで、数えながら詰める。ご立派な貸し主様や。
それで、いちばん腹立つんは自分や。あの三年、電話が鳴るたびに、先に「すんません」と言うとった。今も、知らん番号の前で言いかけた。借りてもない金で、二十年以上、頭を下げる癖がついた安い男。
叔父がくたばったら、香典は包む。包んで、棺の前で一番小さい声で言うたる。地獄でも、電話には出ろ。
コメント
やさぐれ
耳に残るんやなくて、骨に残っとる。
耳に残るんやなくて、骨に残っとる。
ミキ
読んでいて胸が痛くなりました。お母さんには、その話は届いていませんよね。飲みすぎないでくださいね。
読んでいて胸が痛くなりました。お母さんには、その話は届いていませんよね。飲みすぎないでくださいね。
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わかるわ。あの手の電話は一生耳に残る。