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月に足りん九万円の話
母のグループホームの請求書が、また届いた。年金で足りん分は俺が毎月払うてるんやけど、手取り二十二万の派遣から九万近くも抜けていくと、家賃を引いて光熱費を引いたあとに残る金で酎ハイを買うても、計算するたびに酎ハイのほうが先に消える気がする。ほんで貯金は九十万、母が長生きするのと俺の財布が先に尽きるのと、これはもう競争やで。(鼻で笑う)
役所の窓口で聞いてみたら、「減免の制度はありますが、条件がございまして」と来た。渡された紙は三枚、書く欄は山ほどあって、添えるもんを取りに、また別の窓口まで行けという。ご立派なこっちゃ。困っとる人間を書類の迷路に放り込んで、出口まで辿り着いたやつにだけ恵んでやる仕組みやんけ。途中で力尽きた分は「ご案内はしたはず」で片づけられて、どうせ数字には出えへん。
府営住宅を返したとき、母の荷物は段ボール四つに収まった。七十四年が、たったの四つ。
今夜は発泡酒を一本だけにして、請求書を封筒に戻した。日曜に行ったら、母は俺の顔を見て笑うてくれたけど、誰やと思うて笑うたんかは、聞かんかった。
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