内定通知は、思ったより静かだった
電話が鳴ったのは、研究室で解析結果を眺めているときだった。知らない番号。出ると、採用担当だと名乗る人が、内定の連絡だと言った。
廊下に出て、「ありがとうございます」を三回言った。四回目を言いかけたところで、電話は切れた。ドラマなら何か音楽が流れるところだが、流れていたのは換気扇の音だけだった。
席に戻ると、隣の同期が「どうした」と聞いてきた。「内定が出た」と答えたら、「へえ、よかったな」と言って、すぐモニターに視線を戻した。こちらも別にそれ以上は話さなかった。研究室の温度は、だいたいこんなものだ。
夜、母に伝えた。「あら、よかったじゃない」と言いながら、夕飯のおかずが一品増えた。わかりやすい。父は新聞から目を上げて、「そうか」とだけ言った。妹には「ふーん、おめでとう」と言われた。四人とも、感想が短い。うちは全員そうなのかもしれない。
正直、うれしさよりも先に、肩の力が抜けた。履歴書を書く回数が、これで終わる。
ただ、承諾の書類の期限が、思ったより近い。喜ぶ前に、読み込んでおくことにする。
コメント
ことり
おかずが一品増えるお母さま、かわいらしいです。静かなお祝いの感じが、じんわり伝わってきました。
おかずが一品増えるお母さま、かわいらしいです。静かなお祝いの感じが、じんわり伝わってきました。
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換気扇だけはシュールすぎてワロタw 三回もありがとう言うの律儀だなー