黒板消しを三回かけた
今日は土曜だが、午後から塾のアルバイトだった。中学三年の夏期講習で、受験生は夏休みでも元気がない。
授業の最後に、先週やった一次関数の問題をもう一度出した。ほぼ全員が、式を立てる前に図を描いた。先週は図を描けと言っても描かなかったのに、今日は勝手に描いている。理由を聞いたら「描かないと、先生がしつこいから」と言われた。しつこい自覚はなかったが、効果はあったので黙っておいた。
途中で一人が、黒板の式が違うと指摘してきた。見ると、符号が一つ逆になっていた。大学の実験レポートでは符号ミスで三日潰れたばかりなので、他人事ではない。礼を言って直したら、「先生でも間違えるんだ」と言われた。当たり前だ。ただ、間違いを見つけた本人の顔が、今日一番うれしそうだった。
授業のあと、黒板消しを三回かけても、前の授業の白い跡が薄く残っていた。消したつもりでも、完全には消えないものがある。そう書くと少しいい話に聞こえるが、単にこの黒板が古いだけだ。帰りの電車では、座ってすぐ寝た。
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