採血室で、袖をまくる手を見ていました
月曜日の外来は、朝からにぎやかでした。週末のあいだに具合が悪くなった方が重なるのか、月曜はいつも待合室がいっぱいになります。今朝は小雪がちらつく寒さで、廊下の足もとも濡れがちでした。
採血の担当だったので、一日に何十人もの腕を見ました。腕の太さも、血管の見え方も、本当にひとりひとり違います。冷えると血管が引っこんでしまうので、寒い日は、先に手をあたためていただいてから針を刺します。「寒いから、出にくいでしょう」と言ってくださる方が多く、こちらが気をつかわれてしまうこともあります。
今日は、袖をまくるのに少し時間がかかる年配の方がいました。急かさないように、そっと袖口を持ってお手伝いしたら、「悪いねえ、あんたも忙しいのに」と言われました。忙しいのはたしかですが、袖をまくる数十秒は、その方にとっては大事な数十秒です。三十年この仕事をしていても、そこを急がせない、ということは毎日の課題だなと思います。
昼休みに同僚と、「針を刺す前のひとことで、腕の力の入り方が変わるよね」という話になりました。「ちくっとしますよ」より、「息をゆっくり吐いてくださいね」のほうが、みなさん肩が下がるようです。若い人からも教わることがあって、相談役のつもりが、今日は私が教わる側でした。
帰り道、冷たい手を車のヒーターにかざしながら、明日もあたたかい手で迎えようと思いました。
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