雨の朝、クロが戸の前に座る
朝から雨だった。作業場の戸を開けようとしたら、クロが先に来て、前に座っとる。
外に出たいのかと思って、少し開けてやった。出ん。顔だけ出して、鼻をひくひくさせて、雨の匂いをかいどる。しばらくそうして、くるっと向きを変えて、戻ってきた。ちゃんと確かめんと気がすまんのだな。九つになるが、この癖は子猫のころから変わらん。
昔はな、雨の日の作業場は、木が水を吸うで、戸の建て付けが渋くなった。クロはそれを分かっとるのか、雨の日は決まって戸の前におる。わしが手を動かしてみりゃ分かる、と言われとるようだ。ふふ、まさかな。
昼前、台所で妻が味噌汁の鍋をかけたら、クロがすっと膝の横に来た。妻は「はいはい」と言いながら、煮干しをひとつ、手のひらにのせてやる。あれは毎日やっとるのに、毎日はじめてのような顔をして食べる。見ていて飽きんもんだ。
今日は雨で、冷えた。夕方、近所の南原の天神さんの前を通ったら、ブランコが濡れて光っとった。孫が来たら乗せてやりたいが、まだ先だに。
帰ったら、クロが玄関で待っとった。わしの足もとに頭をこすりつけて、ひとこえ鳴く。こういうのは、いかん。つい、遊んでやってしまう。
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