傘をさして川沿いを
朝、五時半に目が覚めると、雨の音がしとった。降るとは聞いとったが、思ったより本降りだに。
散歩は休まんことにしとるから、傘をさして、いつもの川沿いを三十分ほど歩いた。昨日は晴れて暑かったのに、今朝は二十度ちょっとで、風が涼しい。水かさが増えて川の色が茶色く濁っとり、護岸のあたりは草の匂いが濃かった。
工房があったころは、朝は作業場に直行だったもんで、川沿いをのんびり歩くなんぞ、なかったんだ。三月に閉めて、今日でちょうど三か月と少し。時間はたっぷりあるが、まだ持て余しとる。まあ、歩くしかせん。
途中、アジサイが終わりかけていて、花がくすんで茶色くなっとった。これはこれで、いい。ふと傘の骨を見上げたら、一本ゆるんどるのに気がついた。帰ったら直してやろう。道具は、ちゃんと手入れしてやらんといかん。
うちに戻ると、クロが玄関の上がりかまちに座って待っとって、足を拭いてやる間もじっとしとった。濡れた傘を見て、ふんと鼻を鳴らした。ふふ、雨の嫌いな猫だ。妻が「お帰りなさい、って言ってるのよ」と笑うので、そうかもしれん、と思った。
傘の骨は、午後に直す。
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