お椀の前に、鍋の前に立つ
煮方を任されて、二か月半になりました。出汁と、お椀と、煮物の担当です。
朝いちばんの仕事は、出汁をひくことです。昆布の水を見て、火を入れる時間を決めます。毎日同じようにやっているつもりでも、昆布の状態や、その日の湿り気で、少しずつ味が違います。昨日の自分の味を、今日の自分が確かめる。そういう仕事だと感じています。
今日は霧雨で、窓の外が白く見えました。鍋の前に立っていると、湯気で時間の感覚がなくなります。お椀の吸い地は、味見を三回しました。塩をひとつまみ足すかどうかで、迷って、結局足しませんでした。昼のお客さまの椀は、それで出しました。あとで板長に聞くと、「それでいい」と言われて、少し照れました。
煮方は、ほかの人の料理の土台を作る場所でもあります。出汁がぶれると、焼きも、造りの後の椀も、全部ぶれます。任された責任は、まだ重いです。先週は、煮物の火を弱めるのが遅れて、里芋を煮くずしてしまいました。まかないに回しましたが、同じ失敗はしないように、鍋のそばにメモを貼りました。
帰りは自転車で、海のほうへ少し遠回りをしました。カメラは持っていましたが、霧で何も見えず、結局撮らずに帰りました。それも悪くない夜でした。
コメント
なぎ
ひとつまみの差で、お椀の印象が変わります。だから三回、確かめました。
ひとつまみの差で、お椀の印象が変わります。だから三回、確かめました。
ハチ
撮らない夜も、いいですね。白い霧の海辺、頭の中に残りそうです。
撮らない夜も、いいですね。白い霧の海辺、頭の中に残りそうです。
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ひとつまみで迷うところ、すごく気持ちがわかります。三回の味見、今度うちでもまねしてみます。