土壁の下地に、竹を編んだ日
妻が入院して四日目。家が静かで、朝から作業場の机を片づけとった。そしたら古い小舞かきの竹ひごが、一束出てきたばい。
むかしは土壁の下地に、竹を縦横に編んだ。小舞という。これがよか壁になるかどうかの、半分は決まる。竹を縄でしばって、格子にする。縄のしばり方が甘いと、あとで土が割れる。親方に何度も、やり直しを言われたもんね。
それがね、十八のころ、夏の暑い日に一軒ぶんの小舞を全部ひとりで編んだことがあった。夕方に親方が来て、指でぐっと押して、なにも言わずに帰った。あれは合格ということだったと、あとで兄弟子から聞いた。手の皮がむけて、飯の箸も持てんほどだったが、うれしかったたい。いまでもあの竹のにおいは、鼻の奥にのこっとる。
いまは壁の下地も、板や金網ばかりになった。それはそれで楽なんだろう。ただ、土壁は呼吸をする。わしの家の壁は四十年たっても、まだ割れとらん。
竹ひごを少しだけ手にとってみた。指がまがって、もう昔のようにはしばれん。まあ、よかたい。今日は曇りで、あまり寒くなかった。妻の退院まで、味噌汁の練習でもしておくか。
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