編み目が三段ぶん消えた
雨で現場が止まった。朝から小屋にも出ないで、家で膝掛けを編んでいた。自分で使うつもりの四角いやつで、母に教わってから五か月になる。
昼すぎに気づいた。左の端がどうもおかしくて、よく見たら目が一つ落ちていて、そこから縦にほどけて三段ぶん、ぱっくり穴があいてる。いつ落としたのか、さっぱりわからない。夢中で手を動かして、見ていなかった。
鈎針で拾えば直る、と母は言っていた。やってみたが、拾った目がまたすぐ逃げる。老眼鏡をかけて、顔を近づけて、一目ずつ。四十分かかって、直ったのは二段だけだった。残る一段は見ないふりをした。まぁ、いいか。
鉋の刃を研ぐときも、急ぐとだめになる。わかっているのに、編み物だと急いでしまうんだな。手を動かすしかない。
夕方になって雨がひどくなった。屋根を叩く音を聞きながら、味噌汁だけ作って、残りの段を編んだ。直した所は、よく見ればわかる。わかるのはおれだけだべ。それでいい。
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