水が出なかった十日間のこと
震災から五か月がたちました。最近ようやく、あの断水の十日間のことを順に書けそうな気がして、今日は夜に机に向かっています。外は雨で、少し涼しいです。
うちは水が出なくなって、最初の数日は、近所の人の井戸に頼りました。裏の家に古い井戸があって、「持っていってください」と声をかけてもらったのです。父と二人でポリタンクを台車に載せて、何往復もしました。井戸水は冷たくて、重くて、肩がこりやすいぼくには、ちょっとこたえました(笑)。
それより印象に残っているのは、水そのものより、人の動きです。給水車が来る時間になると、誰が言い出したわけでもないのに、足の悪い人や高齢で動きにくい人の分を、先に誰かが並んで受け取っていました。隣の祖父のところにも、顔も知らない人が水を運んでくれていたと、あとで知りました。蔵が傾いて落ち込んでいた祖父が、「ありがたいなあ」と何度も言っていたのが忘れられません。
一応、うちも少しはお返しをしました。瓦が落ちた家の片づけを、母と手伝ったくらいですが。助け合いというのは、大きなことをするより、できる分を黙って出すことなんだなと、そのとき思いました。
水道が戻った日、蛇口をひねって水が出ただけで、家族みんなで「おお」と声を上げました。あの感じは、たぶん一生忘れません。まあ、また今度。
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