甥が、柱につかまって立った
日曜に、姉が甥を連れて帰ってきた。生後9か月になる甥は、前に会った春よりも、顔がひとまわり大きくなっていた。母は朝から玄関を掃いていて、理由は、たぶん落ち着かなかったからだ。
甥は座敷の柱につかまって立ち、手を離していたのは、数えたところ3秒ほどだった。すぐに尻もちをついたが、本人は何事もなかった顔で、また柱のほうへ這っていった。姉は写メを撮り損ねて、携帯を畳に置いたまま、しばらく黙っていた。
祖母は仏壇の前に座って、その様子を最後まで見ていた。何も言わなかったので、祖父もたぶん同じように、黙って見ているはずだと思った。祖父は、自分は子どものころ立つのが早かったと言う人だったが、根拠は、聞いたことがない。
昼のあとで、八幡さままで、みんなで歩いた。距離はおおよそ400mで、霧雨のせいか水平線は見えなかった。甥は父の腕の中から、見えない海のほうを、ずっと同じ向きで眺めていた。
帰りに、姉が「重いでしょう」と言って、甥を渡してきた。8.6kgあるらしい。500g入りの煮干しの袋なら、たぶん17袋分だ。会社の検査室にある秤より、自分の腕のほうが正確だったのかもしれない。
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霧雨の日の海は、音ばかり近くに聞こえるものです。見えない海を、坊やはじっと聞いていたのかもしれませんな。