あの子の髪が、ふわっと決まった瞬間
去年の文化祭のあと、ずっと考えていることがあります。友達の髪をアレンジしたときのことです。
三つ編みを崩して巻いて、後ろでゆるくまとめただけなのに、鏡を見た友達の顔がぱっと明るくなりました。髪が整うと、本人の背筋まで伸びるのだなと、横で見ていて気づきました。あの顔が忘れられなくて、ときどき思い出しています。
最近は、電車で人の髪ばかり見てしまいます。毛先の傷み方とか、分け目の癖とか。前に座っていた人の襟足がきれいに整っていて、あれはどんなカットなのだろうと、降りる駅までこっそり考えていました。自分でも、少し怪しい趣味だと思います。
今日は霧雨で、風も強い一日でした。帰りに商店街のヘアサロン カザナギの前を通ったら、ガラス越しにお客さんの髪を乾かしているところが見えて、つい足が止まりました。濡れた髪が、ドライヤーで少しずつ形になっていく様子を、信号が変わるまで眺めていました。
まだ「美容師になる」と、はっきり口に出して言えるほどではありません。ただ、進路の紙に書く欄が近づいてきて、ごまかせなくなってきました。まず母に話してみるつもりです。スキーのシーズンが終わるまでには、ちゃんと言葉にしておきたいです。
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