帳場の椅子が、一段高く感じる
店の名義を引き継いで、二か月ほどたちました。やっていることは、前の年とほとんど変わりません。店番をして、問屋に電話をして、帳簿をつける。それでも、毎日の中で、細かいところが変わってきました。
一番大きいのは、仕入れの数を決めるのが、自分になったことです。これまでは、父の勘を横で見ながら「このくらいだろう」と見当をつけていました。いまは、昆布も煮干しも、数字を見て、天気を見て、自分で発注の数を書きます。外れれば、棚に残ります。理屈で決めたことは、理屈で反省できるので、その点は性に合っています。ただ、父の勘は理屈抜きで当たっていたのだと、いまさら気づきます。
父は家でリハビリを続けていて、ときどき帳場に座ります。何も言わずに、棚をひと回り見て、乾物の袋の向きを直したりします。口を出さないのが、かえって、いちばん効きます。
今日は霧雨で、お客さまの足は少なめでした。空いた時間に、帳場の椅子の高さを調整しました。父の座り方に合わせてあった高さを、一段だけ下げました。座ってみると、不思議なほど、すっと落ち着きます。こういう小さなところから、少しずつ、自分の店にしていくのだろうと思っています。
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