霧雨の土曜、はさみを研ぐ
朝六時に起きたら霧雨じゃった。窓を開けると湿った空気が入ってきて、梅雨前のこの感じは嫌いじゃない。
ほんで、七時半から店の掃除とハサミの手入れをした。毎朝のことじゃ。砥石に水をかけて刃を寝かせ、ゆっくり引いていくんじゃが、右手首にサポーターをしとるけえ、力は入れずに軽く、軽く動かす。刃先を紙で試したら、すっと切れた。ええ感じじゃ。
最近は手元が見えにくうなって、老眼鏡をかけんと刃の具合が分からん。父は八十になっても眼鏡一つで研いどったけえ、あの人は手が覚えとったんじゃろう。わしはまだ、そこまでいかん。
土曜は客が多くて、予約は七人、最終の受付は五時半じゃった。常連さんが「雨じゃのう」と入ってきて、頭の話より先に天気の話をするんで、わしは聞き役にまわって、うなずきながら刈った。母は昼になると、台所から味噌汁の匂いをさせとった。
夕方は道具を拭いて、油をひいてしまう。切れんハサミはお客さんに失礼じゃけえ、これだけは欠かせん。まあ、そんなもんじゃ(笑)。明日は雨が上がるらしい。
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