弁護士からの手紙は封筒が薄かった
弁護士事務所から手紙が来てた。封筒がやけに薄い。薄い封筒に良い知らせが入ってた試しはないべ。開けたら案の定、「受任通知の効力を終了します」みたいな内容。要するに打ち切りだわ。去年の三月に頼んで、毎月の返済を続けるって約束で始めたのに、二月の分から払えなくなった。三回目で電話が来て、四回目で手紙。早いもんだべ。
そもそも毎月の返済額、手取り十五万の人間が出せる額じゃなかった。家賃と灯油と電気とガスと、あと酒。酒は削れない。削ったら仕事に行けなくなるっしょ、手が震えて。だから削ったのは返済のほう。単純な話さ。弁護士は「無理のない計画で」とか言ってたけど、無理のない計画が書いてある紙は、守る気のある人間用なんだわ。俺は最初から守る気の薄いほうだった。まあ、知らねえよ。
で、打ち切りになるとどうなるか。止まってた督促が、また全社から来る。しかも利息は、止まってた分も含めてなまら復活するらしい。ありがたい話だわ。弁護士費用もまだ残ってるって書いてある。借金を減らすために頼んだ人に、借金を足された形。おまけに右足の親指は痛風でパンパンに腫れてて、靴下をはくだけで涙が出る。夕方、角の酒屋でカップ酒を二本買って、薄い封筒の上に置いて飲んだ。封筒が結露でふやけて、なかなかいい柄になったわ。
約五百二十万。任意整理がダメなら次は自己破産だの個人再生だの言われたけど、書類を揃える元気がどこにもない。どうせ俺は書類を揃えるくらいなら競輪の出走表を読むほうを選ぶ。それが俺だべ。弁護士も役所も貸した会社も、みんなで俺を助けるフリして金だけ取っていけ。全員まとめてしばれる朝に凍ればいいと思ってるよ。もちろん俺も入れてな。したっけ、また明日。
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